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新しい学校教育を担うレクリエーション指導者
(レクリエーション指導者資格取得のための最終課題としてまとめたものです。)
T.教育改革とレクリエーション
明治以来,わが国は「欧米に追いつき追い越す」ことを目標に,ひたすら効率化を追求してきた。その結果,教育は量的に拡大したが,反面,教育方法の硬直化,画一性や経営の閉鎖性などの歪みも出てきた。このため,子どもの実態や社会の変化に即応できなくなり,学校全体から活力が失われてしまった。
これらを是正すべく,21世紀に向けての教育改革として,一人一人の子どもの個性を伸張し,多彩な能力を育む視点に立った教育の推進が叫ばれるようになった。平成元年度に全面改訂された学習指導要領では,これまで知識・技術の伝達に偏りがちであった学校教育を見直し,自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力を身につけさせ,心豊かな人間の育成を目指すことを目標にしている。
また,生涯学習時代に照らし,学校は子どもたちが主体性を発揮しながら生涯にわたって学び続ける基礎と意欲を身につける場であるという観点から,課題研究や探求活動など,具体的な活動や体験を重視した学習活動を通して,子どもたちに学ぶことの楽しさや成就感を体得させることにも重点が置かれるようになった。 このような“教育改革”の基本的な考え方に対して,学校教育の中でレクリエーション活動はどのように位置づけられるであろうか。
従来から,学校レクリエーションのあり方として,「方法や手段」と「目的」という二つの視点が考えられてきた。今回の教育改革は,そのいずれについても,今まで以上に教育の中でレクリエーションが果たす役割を大きなものにしたといえそうである。楽しい雰囲気づくりのために積極的にゲームやソングを取り入れる,学ぶことの楽しさを体感させる授業としてレクリエーショナルなプロセスを仕組むといった「方法や手段」としての側面。あるいは,自主的・協同的・創造的な実践活動としてのレクリエーションを通して豊かな人間性を育てるといった「目的」としての側面。そのいずれをとってみても,新しい教育観や魅力ある学校づくりを目指した学校教育にこそ,レクリエーション活動が必要不可欠な要素であるといえるだろう。
U.具体的な学校レクリエーションのあり方
以下,具体的にいくつかの点について,新しい学校教育のあり方とレクリエーションの関わりを分析し,あわせて指導者としての役割を考えてみたい。
1.生活科とレクリエーション
(1)生活科のねらい
小学校低学年に新設された「生活科」は,新学習指導要領に基づく新しい学力観が端的に表れている教科である。
基礎・基本の重視と個性教育の推進という観点から,生活自立の基礎を養う生活科は,活動や具体的な経験を通して学んでいく教科であり,自分と社会,自然,自分自身を学習対象としている。単なる知識を与えられて教え込まれていくことに偏りがちであったものを,子どもの具体的な活動や体験を重視して,よりよく生きる生活者を育てようとするところに深い意義があるといえる。
滋賀県教育委員会の示す「学校教育の指針」(平成5年度)においても,このことはさらに具体化されており,学校や家庭ならびに身近な地域の環境を児童の生活とのかかわりの中でとらえ,一人一人の児童の特性をふまえた上で,それらを一体的・総合的に取り扱うこととしている。あわせて,児童の自発性,能動性を生かした具体的な体験を重視することも盛り込まれている。
(2)学校での取り組み
このような生活科の指導にあたって,各学校では,必然的に子どもを中心にした体験学習的な取り組みを多く設定しなければならなくなる。学区内の小学校では,この一学期に「ミニトマトづくり」(子どもたち全員に,一鉢ずつのミニトマトを栽培させる),「がっこうたんけん」(校舎内を探検して地図をつくる),「やさいパーティー」(自分たちで作った野菜をいかにして食べるかという話し合いから,家で採れた野菜も持ち寄ってポテトサラダと味噌汁を作り,パーティーを行う)などが行われた。二学期以降も,社会見学的な「こうえんへあそびにいこう」や,自然の草花や木の実を使っておもちゃをつくって遊ぶ「みずやかぜとあそぼう」など,学校の外(地域)へ出ての取り組みが予定されている。
また,夏休みなどを利用してのキャンプや自然の家での合宿など,従来から地域や各種団体(子供会)と連携して行われてきた集団活動的な行事においても,生活科との関連から,子どもたちの手で役割分担をさせたり,つどいの内容を考えさせたりといった点に配慮がなされるようになり,より自発的な感動体験となるような工夫が凝らされてきている。
(3)レクリエーション指導者としての役割
このように見ると,生活科の目指している教育目標および具体的内容というのは,それ自体がレクリエーション,あるいはレクリエーション的な各種の活動であるといえるのではないかという気がしてくる。遊びの要素をふんだんに取り入れた教育的活動,勉強(学習活動)を遊びで味付けしたもの,といったイメージで受けとめたらどうだろう。
従って,それを指導する先生自身も,子どもたちとともに遊びながら,机上での学習活動にはない自然や人々とのふれあいを通した感動体験を,子どもたちの発達段階に応じて与えていくようにしなければならない。生活科の趣旨を十分に生かした教育活動を展開しようとすれば,先生はみんなレクリエーション指導者でなくてはならない(資格云々ではなくて,子どもたちに接する姿勢として)という気さえしてくる。逆に,レクリエーション指導者の立場で言うなら,授業としては,生活科こそが自分の持ち味・技能をストレートに,かつ最大限に発揮できる場であるということになるだろう。
また,こうなってくると,学校の中でレクリエーション指導者,あるいはその技量といったものが,今まで以上に必要とされてくるだろう。指導者として他の先生にレクリエーションを啓蒙する,積極的に校内研修会等を持つなど,レクリエーション実践者の輪を広げていく努力をすることも大切なことである。
2.環境教育とレクリエーション
(1)環境教育のねらいと学校での取り組み
次に,特定の教科としては位置づけられていないものの,今日的な課題として重要視されてきている「環境教育」について考えてみよう。
小学校においては,先に述べた生活科とも深い関わりがあるが,環境教育は小中高の校種を問わず,全教科領域を通して具体化される性質のものである。そして,一人一人の子どもたちが身近な環境に対する認識を深め,自分も自然の一部であるという考えに立って,環境の保全・改善,健全化につとめ,さらにこのことを生涯にわたって持続できる人間を育てていくことをねらいとしている。
学校での具体的な進め方については,自然に親しみ,自然の美しさに感得することから,生命の尊重,資源の有効利用,生態系の理解など,子どもたちの発達段階に応じて課外(特別)活動とも関連させながら展開していくことになるだろう。「花壇づくり」「動物の飼育」「通学路クリーン作戦」など,思いつくだけでも様々な実践が考えられそうである。
(2)環境教育におけるレクリエーション
しかし,レクリエーション活動およびその指導者の役割が発揮できるのは,これらの自然環境に対する狭い意味での環境教育の場というより,家庭・地域・学校における人間関係を含めた身近な生活空間,すなわち文化的環境を含めた社会環境との関わりについて,子どもたちに好ましい社会性を身につけさせるという点についての教育の場ではないだろうか。
核家族化,集団遊びの減少などによって,みんなで行動することが少なくなり,社会生活を営む上での行動規範の意識が薄らいでいるといわれる今日。かつては遊びの中で,家庭で,地域の中で,社会生活を育む有形・無形の教育が行われていたものが,今ではほとんど影を潜めてしまった。代わりに,その役目を担う場として,学校教育を中心とした地域での活動が重視されるようになった。
このような中で,学校としては子どもたちが集団活動を通して社会性を養う場としての各種行事を,進んで取り入れる必要に迫られてきた。大半が一人か二人っ子という今の家族構成の中で,運動会や季節のつどい行事,縦割り活動,勤労体験学習など,意図的に異学年集団における活動を多く取り入れ,子どもの協調性,年上の人に対する接し方,リーダー性,フォロアーとしての行動などを学ばせるような取り組みを実施していかなくてはならない。
また,地域との連携という点については,村祭りや盆踊り,地蔵盆などの伝統的行事,あるいは各種スポーツ大会へ積極的に参加させることも大切になってくる。地域の教育力を生かした体験学習の場として,開かれた学校づくりを目指す意味でも今後,さらにその推進を図っていくべきだろう。
いずれにせよ,これらの取り組みにおいては,すべてレクリエーション活動がその基軸になることはいうまでもない。より充実した学習の場として生かすために,その企画から構成,展開,振り返りにいたるまで,レクリエーションの理論が応用されるべきであろう。
(3)レクリエーション指導者としての役割
では,これらの活動に,レクリエーション指導者としてはどのようにかかわっていけばよいのだろうか。
まず第一にいえることは「組織づくり」である。学校教育の一環としての取り組みである以上は,学校での体制づくりが必要不可欠なことは言うまでもないが,これらの活動は地域や親など,学校をとりまく周囲の協力体制があってこそ成り立つものである。従って,日頃から密接な連携・協力体制をつくるような働きかけをしていく必要があるだろう。学校週五日制とも関連するが,学校という枠に限らず,自治体や地域,親といった幅広い組織とのネットワークづくりが,今後ますます重要になってくるに違いない。
もちろん,大前提としての「指導力の充実」も欠かせない。指導者自身,常に自分の力量を高める努力をするとともに,他の組織とも連絡を取り合い,研修会や講習会を活発に行って指導者の層を広げていくことも大切である。
また,「情報の提供」という側面も忘れてはならない。高度情報化時代を迎え,メディアの発達とともに,レクリエーションや余暇活動,人材等の情報があふれている。これらの情報を整理し,必要に応じて活用していくことは,行事を充実した楽しいものにしていく大切な要素である。情報の発信者として,適切なアドバイスができるようになることが,これからの指導者には欠かせない要素になってくるだろう。
さらに,「情報の収集」についても配慮すべきである。昔ながらの伝統芸能・技術の伝承者としては○○さんがいる,この指導だったら△△サークルがいいといったような形で,地域の埋もれた人材,組織の発掘と整理ができれば,より効果的な行事が企画できる。それによって,固定観念的に学校という枠の中で行われてきた諸行事に深みと幅を持たせ,子どもたちを未知の体験に誘ってやることもできるに違いない。
3.高校教育改革とレクリエーション
(1)高校教育改革の目指すもの
高校教育改革は,受験戦争の激化や画一的な教育,学校への不適応など高校教育の弊害が深まる中で,子どもの心の抑圧を軽減することを基本的な考え方としている。そして,教育の量的拡大から質的充実へ,形式的平等から実質的平等へ,偏差値偏重から個性尊重・人間性重視へそれぞれ転換していくことを改革の視点に据え,「単位制高校」や総合学科設置等の「学科再編成」など,広範な領域にわたってその改善がなされようとしているところである。
実例を具体的にあげればきりがないが,観光リゾートコースを設置して体験学習を重視した教育を行うとともに,土曜日を“自己実現の日”として「趣味・娯楽」(ゴルフ,テニス,自然探索など),「生産活動」(カヌー作り,山菜採りと加工など),「資格取得」(ワープロ・パソコン検定,スキー検定など),「創作・奉仕」(無形文化財保存,町内クリーン作戦,施設訪問など)の4分野の講座を開講し,学校職員のみならず外部からも講師を招き指導が行われている北海道ニセコ高校,あるいは,ゴルフ専攻コースを設け,将来は専用のミニゴルフ場(9ホール)を建設するという私立埼玉高校,生涯学習講座を開講し,社会人も積極的に受け入れている単位制の都立新宿山吹高校,多様な選択科目を設け,総合学科の先導的な役割を果たした埼玉県立伊奈学園総合高校など,次々と新しいタイプの高校が誕生している。これらは,いずれも教育改革の趣旨に添って,高校教育の多様化・個性化を図ろうとするものである。
(2)レクリエーション指導者としての役割
このような流れの中で,レクリエーション指導者はどのような対応をしていけばよいのだろうか。また,どのような対応が可能なのだろうか。
それぞれの高校の形態によって事情が異なり,一概に言えないかもしれないが,今回の教育改革によって,従来の高校教育に比べるとレクリエーション分野の指導,あるいはレクリエーション的な活動が,現場の中で積極的に取り入れられるようになってきたことは事実である。指導者としては,その役割を発揮する場面が増えてきたということになるだろう。
従って,カリキュラムの中にレクリエーション分野の科目が設置されている場合は,授業の中で直接その指導を行わなければならなくなってくる。レクリエーションそのものを教えることを目的とした「レクリエーション教育」としての展開である。多様なコース・科目の導入によって,今後ますますこの方面での活動の場が広がっていくだろう。
また,授業として設置されていなくても,先の環境教育の項でも述べたように,課外活動や各種行事の中で,主体的な生き方,集団の一員としての自覚・人間関係,豊かでたくましい人間性などを育成するための活動に対する要求が高まることは必至である。これらのリーダーとして,自己の持ち味を生かした積極的な関わりも必要になってくる。
しかし,学力一辺倒,知識の詰め込み,退学者の増加,過酷な受験戦争,塾通いなどに象徴される現在の高校教育が,改革の名の下にすぐに変わるとは思えないという声もよく聞かれる。それに屈することなく,レクリエーション活動を通して「もの」の教育から「こころ」の教育へ,指導者として,たとえささやかな取り組みでも,子どもたちとの心のふれあいが大切にできるような実践を積み重ねていくことが大切だろう。
4.ボランティア活動とレクリエーション
最後に,生涯学習につながる学校教育という観点でもう一つ付け加えておきたいのが「ボランティア活動」である。
ボランティアといえば,かつては福祉中心だったが,今は“いのち”“くらし”“みどり”など,身の回りの生活課題のほぼすべてを対象とするようになってきている。そして,生涯学習と同様,自主性や自発性,それに自己啓発と相互学習の姿勢の育成が図れるという点で,文部省の生涯学習審議会も,その一項目に「一人一人の学習成果を生かしたボランティア活動の推進」をあげている。
このような中,学校においても週五日制の取り組みの一つとして,あるいは課外活動の一環として,ボランティア活動の積極的な推進が図られようとしている。さらに,高校入試制度改革の一つの柱として,スポーツ活動,文化活動,社会活動とともに,ボランティア活動についても積極的に評価するような方向性が打ち出されてきており,こうした流れがますます加速されていくことも予想される。
従って,今後,子どもたちのボランティア活動を指導・支援することも,レクリエーション指導者としては必要になってくる。しかし,これを行うとなると,学校領域におけるレクリエーション指導者であっても,どうしても福祉領域での指導のあり方,位置づけ,方法などの知識を学んでおかなければならなくなる。そのためには,福祉領域の指導者組織との関係を密にしながら,さらに幅広いレクリエーション指導者として活動できるよう自己研修に励む必要が出てくるだろう。そして,その中で学び得たものを,子どもたちとともに実際の活動の場で生かすことができれば,こんなにすばらしいことはないと思う。
V.まとめにかえて
以上,いくつかの点について,新しい時代の学校教育におけるレクリエーション指導者の役割を考えてきたが,どのような教育の場面にあっても,レクリエーション活動の果たす役割が大きくクローズアップされてきていることは間違いがないようである。
豊かになった我が国において,自分の生活設計をどうするのか,どのような生き方・過ごし方が自分にふさわしいのかなど,「こころの時代」に向けての“生き方”を考える土台を学校時代に身につけておくことが大切になってきている。その能力を子どもたちに身につけさせることが学校教育の果たすべき役割であると同時に,その一端を担うのが我々レクリエーション指導者であるという認識に立ち,今後も努力を続けていかなければならないと強く感じるところである。