だいぶ前のことになるが、サンケイ新聞(夕刊)に
SF作家が寄せた、こんな一文があった。
題して『誤字強制』。
「社内文書に厳しいとお聞きしまして取材にうかがったのですが」。
「社内に限りません。文書は会社の文化レベルを示すものですから、
間違いがあっては会社の名誉を傷つけます。
正確に簡潔に。
特に誤字には厳しく注意するよう、わが社独自の矯正システムを開発しています。
実際に見ていただくのがいいでしょう。社内をご案内しましょう。
まず、あそこにキャスター付きの机を押している社員がいるでしょう。
『人事異動』を『人事移動』と書き間違えたのです。
そこでシステムが作動して、"移動"するよう命じたのです。
これに懲りて同じ間違いはもうしないでしょう」。
「ずいぶん早口で報告している社員がいますね」。
「一部始終を報告せよと言われて、『一分始終』と書いたのでしょう」。
「間違うと、誤字どおりに実行することになるのですか?」。
「一日だけですがね。言葉というのはそれほど厳しいものです」。
「あそこで、窮屈そうに一つの椅子に二人腰掛けていますが」。
「『一身同体』とでも書いたのでしょう」。
「その隣の社員は目を赤くして眠そうですね」。
「ああ、賃上げ要求のワッペンに要求貫徹を間違えて『要求完徹』と書いたのですよ。
徹夜マージャンじゃあるまいし。強制的に完全に徹夜させられたわけですよ」。
「時計を見て困っている社員は?」。
「『未だに』を『今だに』と書いたので、時計が壊れたのでしょう」。
「あの背中を丸めている社員はどうしたんですか」。
「職場体操で、屈伸運動を『屈身運動』とやったんですな」。
「わっ、この会議室の中で誰かが喧嘩していますよ」。
「職場委員会の委員選出ですな。ああ、わかりました。
投票が『決戦投票』になったのでしょう。まるでヤクザの跡目争いだ。
ま、これに懲りて今度は『決選投票』になるでしょうが」。
「わあっ、あちらで何か大騒ぎしていますよ。けが人が出たようです」。
「またか。新入社員がよくやる事故だ。
単刀直入にというのを『短刀直入』にするから、危なくてしょうがない」。
「表で車の事故が起きたようです」。
「救急車を呼ぶつもりが『急救車』を呼んだので転倒したのでしょう」・・・。
「いやあ、勉強になりました。
さっそく、誤字強制システムの記事を書かせていただきます」。
「あっ、『強制』ではなく『矯正』ですよ。さあ大変だ。
あなたは今日一日、誤字を強制されることになりますよ」。
「そ、そんなばかな。私は社員じゃありません。取材に来ただけだ。
だいたい客に失礼だぞ。こんなおかしなシステムを作るのはけしからん。
シリメツレツだ。わっ、わわっ、尻が縦横十文字に割れた。どうしたんだ」。
「ほら、さっそく誤字が強制された。支離滅裂が『尻滅裂』になったのですよ」。
さて・・・、皆さんはこんなふうに自分が気づかないまま"誤字"や"当て字"を
使っていることはありませんか?
パソコンの普及に伴い、キーをポンと叩けば漢字が出てくるのをいいことに、
よく考えもせず無頓着に漢字を使ってしまいがちですよね。
気をつけなくちゃ、ねっ。

う!私しょっちゅうかも