私立高等学校の入学志願動向

日本私立学校振興・共済事業団の発行する、私学経営情報第29号「私立高等学校の経営改善方策に関するアンケート報告」という冊子がある。

平成21年度7月に全国の私立高校に対して実施した、生徒募集対策、教育改革、人事管理、経理・財務等に関するアンケートを、16年度実施の前回アンケートと比較したもので、全国の学校法人が厳しい経営環境を乗り切って、個性ある私学教育推進するための教育改革や経営改善を行う際に役立つようにと刊行されたものだ。

さしあたり、ここでその結果について触れることはやめておくが、巻末に参考資料として掲載されている、21年度の「学校法人基礎調査」に基づいた私立高等学校の入学志願動向について、少し気になるところをまとめておきたい。

この調査は、毎年5月1日を基準日として実施されている「学校法人基礎調査」から、私立高等学校の入学者等に関する項目のデータを集計したもので、全国1,321校の私立高等学校のうち1,267校(集計率95.9%)のデータを集計、その動向を分析している。

☆全国的な動向の特徴

1.入学定員、志願者数、受験者数、入学者数は平成4年度以降で最低。
2.入学定員充足率は前年度より0.56ポイント下降。
3.入学定員充足率100%未満の学校数割合は77.7%、50%未満の割合は13.7%。

《入学定員》 412,163人 前年度より5,760人(1.4%)減
《志願者数》 1,119,251人 前年度より24,963人(2.2%)減
《受験者数》 1,096,643人 前年度より27,270人(2.4%)減
《入学者数》 325,429人 前年度より6,915人(2.1%)減

入学定員充足率は78.96%で、前年度から0.56ポイント下降。入学定員充足率が100%未満(入学者が定員に満たない)の学校数は1,267校中985校で全体の77.7%となり、前年度の75.8%から1.9ポイント上昇。同様に、50%未満(入学者が定員の半分にも満たない)の学校数は174校で全体の13.7%となり、平成4年度(36校)と比較すると約4.8倍に増加。

☆都道府県別の入学定員充足率の動向

5カ年の推移をみると、17年度と比較して志願倍率、入学定員充足率とも上昇しているのは、青森県、群馬県、埼玉県、東京都、富山県、山梨県、静岡県、愛知県、三重県、大阪府、鳥取県、岡山県、長崎県、宮崎県の14都府県。

入学定員充足率の分布推移をみると、70%未満の学校割合は7年度と比較して、福井県、静岡県、岡山県、長崎県を除く全ての都道府県において上昇。全ての学校が定員未充足という都道府県は7年度時点ではなかったが、21年度には青森県、秋田県、栃木県、石川県、徳島県、香川県、高知県の7県に増加。

☆滋賀県の入学定員充足率の動向

《100%以上》 7年度:3校 → 12年度:4校 → 17年度:4校 → 21年度:5校
《70~100%》 7年度:3校 → 12年度:2校 → 17年度:1校 → 21年度:0校
《70%未満》 7年度:1校 → 12年度:2校 → 17年度:2校 → 21年度:3校

定員が充足している学校と未充足(70%未満)の学校に二極分化が進んできている。「行列効果」のようなものが左右しているのか、人気のある学校はどんどん志願者が増え、反対にそうでないところは減っているという傾向も否めない。

また、70%未満の割合は7年度14.3% → 12年度25.0% → 17年度28.6% → 21年度:37.5%と、単年度ごとにみると多少の増減はあるものの確実に増加してきている。

☆京都府の入学定員充足率の動向

《100%以上》 7年度:13校 → 12年度:11校 → 17年度:4校 → 21年度:4校
《70~100%》 7年度:19校 → 12年度:22校 → 17年度:21校 → 21年度:19校
《70%未満》 7年度:7校 → 12年度:6校 → 17年度:15校 → 21年度:17校
《70%未満の割合》 7年度17.9% → 12年度15.4% → 17年度37.5% → 21年度:42.5%

堀川、西京、嵯峨野に代表される公立人気の影響もあってか、京都私学も年々厳しくなっている。21年度、定員を満たしている学校が40校中4校しかないのにも驚く。

☆大阪府の入学定員充足率の動向

《100%以上》 7年度:30校 → 12年度:30校 → 17年度:17校 → 21年度:14校
《70~100%》 7年度:51校 → 12年度:41校 → 17年度:34校 → 21年度:39校
《70%未満》 7年度:12校 → 12年度:22校 → 17年度:41校 → 21年度:38校
《70%未満の割合》 7年度12.9% → 12年度23.7% → 17年度44.6% → 21年度:41.8%

「競争原理」を、これまで以上に導入するという橋下徹知事の高校改革。公立高校同士の進学競争もさることながら、公立高校の授業料無償化とあわせ私立助成を大幅に拡充し、公私間の授業料格差を解消、家庭の経済事情にかかわらず私立・公立を問わず学校を選べるようにするという、教育の質で自由競争を促す試みがどう影響していくのか、私学人としては大いに注目だ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

This blog is kept spam free by WP-SpamFree.