高校無償化、私立の加算対象縮小

民主党がマニフェストに掲げ、文部科学省が概算要求していた高校の実質無償化について、「公立高校では授業料を徴収しない」などとする無償化の制度内容が政府決定された。

新聞各社の報道は基本的に変わらないが、多くが公立高校の制度から説明している中、毎日新聞だけは私立高校の説明から始まっている。

以下、記事内容を抜粋すると・・・

川端達夫文部科学相は23日、来年度から、私立高校に通う子供がいる年収350万円以上の世帯には年額11万8800円を上限に授業料相当額を助成し、年収250万円以上350万円未満の世帯は1.5倍の17万8200円、250万円未満の世帯は2倍の23万7600円とすることで、政府内で合意したことを明らかにした。

文科省は高校無償化関連の来年度予算概算要求で、私立高校について「年収500万円未満の世帯は助成額2倍」と想定し、4501億円を計上していたが、予算額を3933億円にまで圧縮する。

一方、公立高校の授業料無償化は、小中学校と同様に授業料を徴収しないしくみにして、授業料収入相当額(生徒1人当たり11万8800円)を国から自治体に交付する。授業料が高い大阪府(14万4000円)や東京都(12万2400円)では差額が生じるが、川端文科相は「(自治体に)財源の手当てを求めていく」と述べた。

・・・とまあ、こんな調子。

さてさて、川端文科相によると「厳しい財政で、私学の上乗せ分を圧縮せざるを得なかった」ということだが、当初の「年収500万以下は加算支給」という案から考えると、やはり「どうして私学だけが・・・」という思いが残る。

これまで、私学助成に対する意見交換をする中で、川端文科相からは「私学も公教育の一翼を担う重要な教育機関」「公私の格差はできるだけ是正すべき」という考えを聞いていただけに、残念さを感じてならない。

むしろ、川端文科相が記者会見で述べている、「高校に行きたいと思っている生徒が経済的な理由で行けなくなることがないようにするために高校無償化をはかる」のであれば、私学も公立と同様に扱うのが筋ではないのか。

どうも、政府・民主党の私学に対する位置づけが、「私学は公立の補完物(おまけ)」というように変わったのか・・・という不安さえ感じる。

これまで、滋賀県選出の国会議員からは、私学に対しても「年収500万以下は24万円」という政策はすぐには難しいけれど、いずれは《私学も学費無償化》が可能となるようにとのことで出された《過渡的措置》」だという話を聞いていたこともあって、今回の決定はその趣旨・理念を大きく変えるもので、個人的にはどう考えても納得できない。

本当に、経済的に困難な状況を抱えている子どもたちを救いたいのであれば、むしろ「所得制限」を公立にも設けた方が筋の通る話で、これなら「名を捨てて、実をとった」と納得できる。

しかし、今回の決定は「公立高校無償化」という公約の名にこだわり、目の前の経済的に困難な状況を抱えている子どもたちの未来を奪ってしまいかねない施策にもなりかねない。

公立が「完全無償化」される一方、私学だけが対象を縮小されるとなると、現在でも、公立無償化に伴い公立志向が強まる中、「雪崩を打って」私学から公立へ受験生が流れ、結果として公立の定員枠に入りきらず、多くの生徒が行き場を失ってしまう事態も起こりうるだろう。

また一方で、私学の生徒募集に多大な打撃を与え、経営困難に陥る学校が出てくることは必至だ。


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