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Space Education Project

本校の中学1年生が今日から、国際宇宙ステーションで長期間保管されたのち、日本に持ち帰られた「宇宙種」の栽培実験をはじめました。

理系強化に取り組む本校では、子どもたちに宇宙への夢と関心を向けるきっかけになればと、最先端科学教育プログラムを提供している株式会社リバネスの宇宙教育プロジェクトに参加。総合学習の時間を使って宇宙種と地球上の種を同じ環境で栽培し、発芽から生育、収穫までの違いを詳しく観察します。

栽培は、野山でよく見られる豆科植物のミヤコグサで行われ、実験に使う宇宙種子は2008年7月、スペースシャトルで国際宇宙ステーションに運ばれ、日本の宇宙実験棟「きぼう」内で8カ月間保存されたあと、翌年8月に日本に帰ってきたもので、地上の1000倍もの宇宙放射線を浴び、生物の設計図であるDNAに何らかの変化が起きている可能性があります。

この日は実験初日ということで、会社から生命化学の博士2名が来校。まずは実験の目的や内容、取り組み方などの説明がありました。

実験についての説明

山崎直子さんからのビデオメッセージに、実験への期待感が高まります。

山崎直子さんからのメッセージ

宇宙種子とプロジェクト任命書の授与を受けて、いよいよ実験のスタートです。

プロジェクト参加任命書の授与

宇宙種と地球種に、見た目の違いがあるのかどうか・・・。見つめる生徒の目は真剣です。

宇宙種と地球種とを見比べる生徒

種子をまく前に、発芽を促すために前処理をします。種子の表面をサンドペーパーで擦り、表面に傷をつけ、水とともにマイクロチューブに入れ、1時間ほど吸水させます。

種子の前処理

その間を利用して、DNAの働きについて説明があり、実際にブロッコリーからDNAを取り出す実験も行いました。

ブロッコリーからのDNA抽出実験

こんなに簡単にDNAが見られるなんてビックリ! 生徒たちの活き活きした反応に時間の経つのを忘れてしまいます。

時間の経つのを忘れて実験に夢中

実際に取り出されたブロッコリーのDNAが、これ!(浮いている、白っぽいかたまり)

ブロッコリーのDNA

さらに、放射線のDNAへの影響を確認するために、霧箱の実験もあわせて行いました。ちょっぴり神秘的な雰囲気に、興味津々です。

霧箱の実験

この間、ずっと休憩なし。まるで大学の研究室で実験をしているような感じで、時間が流れていきます。

さて、最後にいよいよ前処理をした種子を播きます。一人ずつ、ピンセットで種子をつかみ、連結ポットに播いていきます。宇宙種と地球種を間違えないように、やさしく、丁寧に・・・。

ポットに種子を播く

全員が播き終わったら、気温と照明が一定に保たれた人工気象器の中にポットを入れ、栽培実験がスタートしました。

人工気象器に入れられたポット

このあと、2日に一回、定量の水やりを続けると発芽が始まり、56日目あたりになると花が咲き終えます。さやができはじめた日から水やりを止め、種子が採れるまで栽培を続けます。

この間およそ91日。途中、一週間ごとに葉の数、茎の長さ、開花日、さやの数などを観察記録にまとめ、宇宙種と地球種に違いがあるかを調べます。

生徒たちは、ふだんの授業では経験できない実験に関心を寄せ、どんな結果が出るのか興味深そうに実験に取り組んでいました。

全国28カ所で行われた2009年度の実験では、宇宙種に生育不良を起こすものが多くあったといいます。今回の実験結果は会社に報告され、全国で取り組まれている同様の実験データとの照合が行われます。


先生も子どもも楽しく学べる小学校理科

滋賀学園中学・高等学校 公開講座

子どもたちの理科離れが進み、PISAの国際学力テストでも「考える力」の欠如が指摘されています。技術立国であった日本の将来を危ぶむ声も聞かれる中、初等教育における理科教育の重要性がクローズアップされはじめました。

開校以来、地元の方々に支えられてきた本校ですが、ここ数年、地域と交わり、地域へ貢献できる活動を積極的に進めています。その一貫として、先日、小学校の先生方を対象に公開講座を実施しました。

講師は、本校の中学部で理科を担当している特任講師(京都教育大学・同大学院 非常勤講師)の松林 昭 先生で、私もお世話係として参加しました。

参加者がそれぞれ自己紹介した後で、まずは松林先生のこれまでの経験をもとにした「理科教育と環境教育」「教材開発と実践事例」の大きく二つについて、PowerPointを使った講義がありました。

特に、スウェーデンの中学校のブルンネル教諭が提唱している「ボトル生態系モデル教材」(Brunner 1996)を応用した実験事例には参加者全員が大いに興味を示し、休憩時間も議論が続きました。

後半は、いよいよ松林先生の独壇場。身の回りのものを使った実験体験です。まずは「不思議なふりこ」。

ふりこを作ろう

細い竹に、長さの違うたこ糸を結びつけ、先に5円玉をつるした「ふりこ」をつくります。それを手に持ち「念力?」で揺らします。

ここで大切なポイントは、全部を一度に揺らすのではなく、これだと決めた一つだけを揺らすこと。揺れ始めたら、それを円を描くように回転させていきます。

最初は、なかなかうまくいかず、力の加減がわからないようですが、少し慣れてくるとたいていできるようになります。手に加えた力と「波長の合う」ものだけが揺れていく感じがつかめたらOKです。

さあ、ふりこを揺らしてみるよ

大人たちが夢中になっている様子は、傍で見ていてもなかなか面白いもの。「隠し芸で使えるなぁ〜」「これを導入にやったら、授業に集中するかも・・・」と、自分が没頭しただけに、真実味のある言葉が次々と出てきます。

続いては、静電気の実験。風船を膨らませ、ティッシュなどでこすって、静電気を発生させます。その風船をアルミ缶に近づけると・・・。あらら不思議、アルミ缶が転がっていきます。まるで磁石を近づけたかのような動きです。

これで終わったらフツーです。松林流はひと味違い、向かい合った2人が1個の空き缶を使って「対戦」するのです。どちらの静電気がパワーを持っているか、いざ勝負!

風船静電気の空き缶相撲

またまた、ハマってしまいました。見てください、この笑顔! こんなに単純なことで大喜びできるわけですから、理科実験の凄さがわかります。やっぱり科学は楽しいのです。

他にも、空気砲や水を使った実験などもあり、予定していた時間を30分以上もオーバー。参加者のもう少しやって?という表情を受けて、最後に登場したのが磁石を使った、これぞ「可視化」という実験です。

まず、空のCDケースを用意し、中のマウントを取り外します。その中に棒磁石を入れ、閉じて机に置き、その上から同じ大きさに切ったOHPシートをかぶせます。

磁石を使った「可視化」実験(手順1)

次に、鉄粉を少しずつふりかけていきます。

磁石を使った「可視化」実験(手順2)

当然、磁力の影響を受け、鉄粉が一定の流れ(磁力線)に沿って線を描くように並んでいくのがわかります。(軽く叩いてやると、よりハッキリします。くれぐれも強く叩かないように)

磁石を使った「可視化」実験(手順3)

で、ここまでならよくある実験というか、結果を確認したよね〜ということで終わるんですが、ここからが「可視化」のメインです。

CDケースと同じ大きさに切った白い紙とスプレーのりを用意し、紙の片面にスプレー乗りを吹き付けます。(のりが飛び散らないように箱の中で行いましょう)

磁石を使った「可視化」実験(手順4)

もうおわかりでしょう。そうです、この紙をシートにできた鉄粉の模様の上にかぶせ、写し取るわけです。ずらさないように注意しながら、そっと紙をのせます。

磁石を使った「可視化」実験(手順5)

のせたら上から全体を軽くおさえ、裏返すと・・・

ジャーン! こんなふうにキレイに磁力線が描かれたものが完成します。のりが乾くまでしばらく待てば、あとはいつでも結果が確認できるってわけ。

磁石を使った「可視化」実験(手順6)

こんなふうに、もうひと手間の工夫を加えることで、同じ実験でも、結果の扱いや法則の再現性、その後の理解などが大きく変わってきます。

見える形に残すことで、実験の時の楽しさや感動を再びよみがえらせる・・・。とても大切なことだと思います。

以上、公開講座のエッセンスを簡単にお伝えしましたが、2学期以降、またどこかでこんな理科実験講座を、対象も一般の方(親子)とかに広げてやっていこうと思います。


2011年 親子理科実験教室(春~夏コース)第1回

台風の影響もあって、時折激しい雨が降るあいにくの天候に見舞われた日曜日でしたが、NPO法人あいんしゅたいん・NPO法人サイエンスEネット・京都大学理学部が主催する「親子理科実験教室(春~夏コース)」の第一回目が、午前10時から京都大学理学部セミナーハウスで行われました。

本校の理科特任講師・松林昭先生が指導されるということで、私も同行。主催者の皆さんと意見交換をさせていただきながら、特に「理科」について、いかに子どもたちの学びを育てていくか、そのために指導者に必要なことは何かについて学びを深めました。

入口の案内板

実験教室のはじめにあたり、主催者を代表して挨拶に立った坂東昌子先生(NPO法人あいんしゅたいん理事長)からは、実際に自分の手でいろいろ試してみて、そこで感じた「どうしてかなぁ~」という気持ちを大事にしながら、科学するココロを育てていってほしいとのお話がありました。

挨拶する坂東先生

引き続いて実験教室が始まり、今日の指導者である松林先生が、お得意のパフォーマンスで子どもたちを笑わせながら、「先生の話を聞くときには、きちんとこちらを向いて聞く」といった、実験教室の基本姿勢=学びの基本を、まず最初にしっかりたたき込みます。

大きな動作で子どもたちを集中させる松林先生

今日の実験テーマは「豆電球に明かりをつけよう」。

京都大学理学部の学生さんと、立命館大学の小学校教員志望の学生さんが1名ずつ、各テーブルにTAとしてつき、子どもたちひとり一人に豆電球や乾電池、わに口クリップなど必要な材料が配られ、いよいよ実験の始まりです。

「豆電球はつくかな?」TAの指導で実験する子どもたち

まずは、電池にどのようなつなぎ方をすれば豆電球がつくかを各自で調べます。そして、明かりがついたときのつなぎ方、つかなかったときのつなぎ方を絵に描きます。

テスターづくり

続いて、厚紙に乾電池ケースを貼り付け、わに口クリップと豆電球をつないで、簡易テスターをつくります。

わからないことはTAのお兄さんやお姉さんに聞いたり、松林先生からアドバイスをもらったりしながら、子どもたちは思い思いのペースで作業を進めていきます。旺盛な好奇心、自分の手でやってみようというチャレンジ精神は、傍で見ていて嬉しくなります。でも、どこか心配なのか、これでいいのか先生に確かめようとする仕草も見えたりして、そこがまたすごく可愛く、子どもたちの素直な反応にココロが熱くなります。

「うまくできたかなぁ~」子どもたちの質問に答える松林先生

テスターが完成したら、いよいよ実験です。電気を通すもの・通さないものをテスターを使って調べていきます。1年玉、5円玉、10円玉、100円玉、1000円札、アルミホイル、サランラップ、鉛筆の芯、銀紙、金紙・・・。一つずつ、まずは予想し、その理由を書いた後で、実際にテスターを使って確かめていきます。

木の温もりが探求心をかき立てるセミナーハウス

セミナーハウスの木の温もりが子どもたちの自由な思考と探求心をかき立て、TAの学生さんも童心に返ったかのように、一緒になって実験を進めます。「なぜ?」「どうして?」その理由を考えることは、本来楽しいもの・・・。それを身をもって体験する子どもたちの表情は、ますます真剣になっていきます。

全員で実験結果の発表会

ひととおり調べられたところで、松林先生と一緒に実験結果を確認していきます。「なぜ電気を通したのか」・・・金属でできているから? どんな金属なの?・・・子どもたちに意見発表をさせつつ、をそれぞれの硬貨の材料となっている金属の説明も付け加えながら、謎を解き明かしていきます。

元気よく質問に答える子どもたち

小学校1年生から6年生まで、総勢42名の子どもたち。どちらかと言えば低学年が多かったようですが、その博識ぶりや堂々とマイクを使って意見を述べる前向きさには、こちらが驚かされました。

やはりこどもたちの感性はすごい!これを育てなくてどうする・・・。大人として、教師として、理科の指導者として、何が大切かを改めて感じさせてくれた実験教室でした。


たくさんのいい出会いと熱い議論

今日は、1・2校時の授業を終えた後、松林先生と一緒に京都大学へ。高等教育研究開発推進機構の小山田耕二先生がリヒテルズ直子さんを招いて、特に初年度教育について意見交換をされるということで、まずはそれに同席させていただきました。

途中から、小山田先生の率いるプロジェクトで、今年の3月10日に開催された第1回全学共通教育国際学生シンポジウム(京都新聞の記事はこちら)の委員長をつとめた、理学研究科の大学院生・酒井清道くんや他の実行委員会メンバーが参加してくれて、意見交換の幅がぐんと広がりました。それぞれの立場で疑問に思っていること、今の教育界、ひいては日本そのものの現状などについて、時に厳しく、それでいて将来の教育をどうしていこうかというポジティブな議論が続き、得ることがほんとうにたくさんありました。

引き続き、学術情報メディアセンター北館地階の可視化実験室に移動し、あいんしゅたいんの理事長・坂東昌子先生を囲みながら、さらに意見交換が続きました。とにかく直子さんの聡明な理論展開と、それにシャープな質問を浴びせる坂東先生の会話が面白く、脳みそフル回転状況でした。また、改めてオランダの魅力というか、取り組みの先進性に驚きました。

夕方6時半をまわり、そろそろお腹もすいてくるころ・・・。あらかじめ近くの居酒屋さんで続きをやろうということになっていたので、そちらへ移動。高等教育研究開発推進機構の先生方(化学の加藤立久先生、英語の髙橋幸先生、数学の山木壱彦先生)も合流され、さらに話が熱をおびてきました。

リヒテルズ直子さんを囲んで

たくさんの先生方との新しいご縁をいただき、さっそくtwitterやfacebookでの交流も始まりました。リヒテルズ直子さんを軸に、日本においてこれから必要とされる教育について、なんらかのアクションを起こしていけそうな、そんな予感を強く感じました。

もちろん本校もその一翼を担うべく、体制づくりを進めたいと思います。


宇宙の96%は正体不明? 最前線の研究者、村山斉

今日の朝日新聞「be」に、東大数理連携宇宙研究機構長の 村山 斉 (むらやま  ひとし)さんが紹介されていました。

2007年10月に発足した東大数物連携宇宙研究機構(IPMU)に43歳の若さで就任、総長より高給で東大の新研究拠点のトップについたとして話題になりました。カリフォルニア大学バークレイ校から移った最初の指示は、午後3時に全員参加のティータイムを設ける、研究会は自由討議の時間をたっぷりとる、この2つだったといいます。

「日本では質問したり、思いつきを話したりするのを恥ずかしがるが、全く逆。新しいアイデアは自由な議論から生まれるものです」

米国の研究所でおなじみのスタイルを持ち込んだ理由をこう語っています。

日頃から、どちらかと言えば限られた人としか議論をしないが故に、業務の硬直化、あるいは意思疎通の不備などを招いている日本的な組織が嫌で、すごく違和感を感じているボクとしては、思わず「そう!同感!」と叫びたくなります。午後3時は無理ですが、午後5時くらいなら「お茶しながらの意見交換会」ができるかな? ふとそんなことを思いました。

「この宇宙でただ一人、君たちに『反物質』の話ができる人が来てくれたよ」と紹介されるこのビデオは、米国 Aspen Center で行われた Physics is for Kids BBQ における講演会の様子です。子どもから大人まで、聞く者をワクワクさせる宇宙や素粒子の語り手として、日本以上に米国で広く知られています。

風船の実験を交えながら滑らかな英語で30分語り、子どもたちから質問攻めにあう・・・。話の内容やレベルは足下にも及びませんが、いつかは英語で理科や数学の授業ができたらいいなぁ~と、夢のようなことを考えている「先生」の姿がここにあります。


中1総合学習、河辺いきものの森で学ぶ「自然と環境」

今日の6校時、中学1年生の総合的な学習の時間は、学校のすぐ目の前にある河辺いきものの森をフィールドに、野外活動を行いました。自然と環境について、実際に自分の目で確かめ、肌で感じてもらおうというイントロダクションの意味を込めた一コマで、今後のテーマ学習につながっていくものです。

本校の理科特任講師・松林昭先生に引率された生徒たちは、笑顔いっぱい。どんな勉強ができるんだろうと目をキラキラ輝かせています。

森に向かって歩く先生と生徒たち

森に着いた生徒たちは、まず先生から今日の学習内容と森全体のあらましについて説明を受けました。さすがに教室内とは違い、緑あふれる自然いっぱいの中、さわやかな空気に触れ、どんどん期待が高まっていきます。

先生から、森全体について説明を受けます

森の中に作られた何本もの自然観察路は、森のさまざまな様子を観察することができ、各所に設置された解説から、森の自然を詳しく知ることができます。木々の下草刈りの作業一つにしても、重要な意味があることを学んでいきます。

熱のこもった先生の説明

水辺のビオトープは、かつて流れていた水路を復元したものです。川幅や水深に変化を持たせてあり、さまざまな水辺の生き物が生息しています。先生の説明を聞きながら熱心にメモを取る生徒たちの姿が印象的でした。

ビオトープについても詳しく学びます

今日の学習の締めくくりは、林冠トレイル。クヌギやアラカシが生育する森の様子を、高さ12mから観察することができる施設です。樹上の木の葉やドングリを間近に見ることができ、鳥になった気分が味わえます。

林冠トレイルに大満足の生徒たち

少し揺れる階段を下りてきた生徒たち・・・。移動も含め、わずか50分とい短い時間でしたが、歩きながら各所で受けた先生の説明によって、次回以降の学習で学んでいくべきヒントをたくさんつかんだようでした。

それにしても、野外での子どもたちの表情には惹かれるものがたくさんあります。自然の一員として、全身で感じる空気があるからでしょう。「五感」で学ぶことの大切さを改めて感じさせられた気がします。