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「一緒に働きたい」と思われること

先日、サライ(6月号)を買いに行ったとき、平積みされているのが目にとまり、そのタイトル(というか、表紙のデザイン)に惹かれ、思わず一緒に買ってしまった本があります。

『「ずっと働いてほしい」と言われる人の仕事力』(山本幸美:著、ぱる出版)。

「ずっと働いてほしい」と言われる人の仕事力(山本幸美:著、ぱる出版)

特に、オビの部分に書かれた、選ばれるヒトに共通するのは「一緒に働きたい」と思われること・・・っていうコトバに魅せられてしまいました。

かつて株式会社リクルートでトップセールスとして活躍し、その後コンサルタントとして1万人以上のキャリアカウンセリングを実施してきた著者が気づいた、ビジネスマンとしての最高の評価。

「あなたにずっと働いてほしい」と言われること。

そのために大切なのは、短期の営業実績を上げることでも、企業が求めている(と思われている)キャリアを積み重ねることでも、ない。

もっと奥深い、根底にあるもの。
つまり、「日々の経験以上の『気づき』に出会うこと」。

日々の気づきの積み重ねがあなたを成長させ、「一緒に働きたい」という最高の評価につながっていくのだということを、筆者自身が経験してきた数多くの学びを通して説いています。

さて、本の内容はともかく、まさにこのことを現実に見たような出会いが、ここ何日か続いています。火曜日(10日)に出会った東京からの教育関係者もそうでした。詳しくは書けませんが、その日のTwitterに

夢・・・じゃないな、目的?信念?大切にしたいこと?生きざま?・・・を共有できる人とに語らいは、時間を忘れる。と同時に、時間以上の満足感を与えてくれる。この先に向かっての希望もあわせて。

というコメントを思わずつぶやいてしまったほど、充実した時間でした。

 ☆☆☆

そして今日、またもや「おもしろい」?、いや「ゆかいな」?・・・。う~ん、なんか違うような気もしますが、まあ、ひとことで言えば「真正面からガッツリきたでぇ~」みたいな感覚を、お互いに初対面でありながら感じ取れたような、不思議な出会いがありました。

相手は、某ホテルの営業さんです。その日は後日、本校が主催するイベントの打ち合わせで会うことになっていました。約束の午後3時、彼はやってきました。お決まりの名刺交換と簡単なあいさつの後、テーブルに対面して座り、おもむろに話を始めようとしたところ、何やら目の前でカバンをゴソゴソする彼・・・。いったいどうしたの?

「すいませ~ん」。あまりにも軽い調子で何を言い出すかと思ったら、「今日の資料のファイル、一式忘れてきました」。しばらくこちらの顔色を見て、思案しているような時間が流れた後、「これから取りに帰っていいですか?」。

いやいや、それはないでしょう。「今日は何のために来たん? 資料がなくちゃ、打ち合わせも何もできんでしょ~に!」。

普通ならそういうコトバをかけるべきなんでしょうが、どういうわけかその時のボクは「これから取りに帰るって?(この雨のなか大変やん!)」、「他のお客さんとの予定もあるんじゃないの?(少し先のことやし、今日でなくてもいいんやで!)」といったような曖昧な返事をしつつ、気がつけば二人で大笑い。 まったくもって本来の仕事とは違った次元で、一気にお互いの距離感を縮めてしまったのです。

これが彼の営業戦略だとしたらスゴイもんです。ただし、時と相手を選ばなければエライ目に遭います。それを含んだ上で、ボクを瞬時に察知し、この手に打って出たとすれば・・・、彼はかなりの大物です。

実際どうだったか、そのことも含めて彼と話した中では、全くそんな意図などなしに、素直に失態を暴露でき、謝ることができた(彼曰く「自分をさらすことができた」)ということでした。ボク自身、どちらかと言えば初対面であろうが、どんな人とも仲良しになれる性格なので、彼のとった対応がすごく自然で、思わず好きになってしまったような感じでした。

その後、資料なしにイベントの打ち合わせを一応したものの、ふだんの仕事のことや、ヒトとの関わり方(営業という立場として)、果てはともにMac(パソコン)ファンだということがわかり、パソコン談義をするかと思えば、仕事場でMacをこんなふうに使ってたで~みたいな話になったり、とにかくお互いに話が尽きなかったのです。

まるで無邪気に、大のオッさん二人が応接室の外にも聞こえようかという大声で、お互いの日常生活にも踏み込んだ話をしていたのですから不思議なもんです。 何がどう作用し、どちらがどうだったのかわかりませんが、意気投合したという言葉で語るにはちょっと違うような感覚・・・。仕事や周囲の人に対するスタンス、大げさに言えば「生き方のスタイル」が同じような安心感を、お互いに自然と感じ取っていたのかもしれません。

そういう意味では、冒頭に紹介した本にあるような「一緒に働きたい人」というのは、こんな人のことを言うんだろうなと思いました。 彼は、翌日、今度はしっかり資料を揃えて出直してきてくれました。

イベント会場としてそのホテルを使う立場のボク(お客さん)と、それを提供する立場の彼・・・。二者の関係でいうなら主客という立ち位置ですが、お互いが協力して招く最大の相手は、そのイベントに来てくださる方々(ゲスト)です。何よりも大切にしなければならないのはゲストの満足感であり、そこに視点を置かなければ何もなりません。

ゲストこそがイベントの主人公であり、そういう意味で言うとボクと彼は招く側の「仲間」だということになります。今回、 資料一式を忘れたという彼の言動の中に、そんな「一番大切なココロ」を感じさせてくれたことが、何よりもうれしかったです。

人と接する上で、何が一番大切か・・・。それがわかっている相手と一緒に仕事ができることに感謝したいと思います。


いまこそ訪れたい、心のふるさと

昨日の朝刊で目にした広告に誘われ、仕事帰り(もうすぐ22時になろうかという時間でしたが)に書店に立ち寄り、『サライ』6月号(小学館)を買いました。最近、書籍といえばネット購入がほとんどですが、ちょっとした雑誌がほしい時など、24時まで開いている書店があり、けっこう便利です。

サライ(6月号)表紙

6月号は日本全国の豊かな「森」が大特集されているのですが、お目当てはそれじゃなくて、もう一つの特集『琵琶湖路「祈りの里」訪う』です。

いま、NHK大河ドラマ『江』でも話題になっている自然の雄大さと国の要所として知られる近江国(滋賀県)を、5つの切り口で紹介しています。何世紀もの歴史が幾層にも重なり、人々の祈りが生き続けている琵琶湖路を、古寺、仏像、伝統の手技を求めて案内してくれています。

サライ(6月号)滋賀県特集

ふだん滋賀県に住んでいながら行ったことのないところや、名前や雰囲気はある程度知っていても、そんなに奥深くまで探ろうとしない部分の「よさ」をが、深みのある写真と記事から伝わってきます。

また、この特集の第2部・第3の旅「近江の手仕事を訪ねる」では、以前から親交のある大西新之助商店(彦根市新海町)の大西實さんが紹介されていて、『近江上布』の魅力が綴られています。

サライ(6月号)特集「近江上布」

ちょうど私自身、昨年のゴールデンウィークに工房を訪ね、見学をしながらいろいろお話しをうかがいました。東京での展示会やインターネットでの販売もやっておられます。

 ☆そのときのようす(写真レポート) WEBショップへのリンクも掲載しています
    → 近江上布、大西新之助商店を訪ねて

 ☆新之介上布に関係するtwitterはこちら
    → @shinnosukejouhu (新之介上布/大西新之介商店)
    → @lake_wistaria (湖藤/新之助上布webshop)


「何をどう撮るか?」を意識することから

「世界一わかりやすい」「ぜったい写真がうまくなる」・・・そんなキャッチがココロをくすぐる、ご存じニコンカレッジの超人気講師・中井精也氏によるカメラの教科書です。

中井精也氏の著書「デジタル一眼レフカメラと「写真の教科書」シリーズ2冊

右がシリーズ1冊目、世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書

「なんだかパリッとしない」「もっとイメージどおりに撮りたい」という方や、ありきたりではない風景写真や家族写真を撮りたいと迷っている方が、突破口を見つけるためのステップアップ本。

左はシリーズ2冊目、世界一わかりやすいデジタル一眼レフカメラと写真の教科書 何をどう撮る? 活用編

カメラと写真の教科書第二弾。「ゆるく」と「シャープに」というふたつのイメージから、露出、構図、ホワイトバランス、仕上がり設定など、カメラを使いこなす方法をやさしく解説。

ともにNikonのカメラを実際に操作している感覚で、各種の設定を実際に示しながら解説されているので、目の前に先生がいるような感じで、すごくわかりやすいのが特徴です。付属のDVDにいたっては、実際に自分のカメラを手に持ちながら設定ができるので(Nikonユーザー以外は、それぞれの機種に合わせた対応が必要かも)、ホント!手取り足取り先生に教わっているような気になります。

「そんなことぐらい知ってるよ・・・」的な基本事項であっても、この本を読むことで「使えるチカラ」として身につきます。写真撮影がますます楽しくなる、デジタル一眼ユーザーオススメ(特にNikon機ユーザー必見)本です。


A Conversation Coursebook For Japanese Students

週初め、月曜日。午前中の授業を終えて、午後は大津で、県内私学の入試広報担当者の会議があった。

学校に戻ってきて、書類の整理や明日の準備をして・・・っと、もうすぐ23時。帰る前に、昨日のブログの流れで、英語ついでにもう一つ紹介しておくことにしよう。

実は、英会話のレッスンにおすすめの教本がある。京都市山科区の City Press (今もあるのかどうか、確かめてはいない・・・)が発行している、『Stimu・Con / Heart to Heart』がそれだ。

どこかの大学の授業のテキストになっているということで、今から十数年前、大津の紀伊国屋で買ったと記憶している。

“Heart to Heart” is the first book of it’s kind which uses a completely illustrated format to tell the story as well as to develop oral skills in English.

すなわち、ストーリーから英会話エクササイズまで、すべてにまんが形式を使った最初の本、というわけ。

最初のストーリー・パートでは・・・

About Clint Johnson, an American who comes to Japan to teach English at a university for a year, his search for an apartment, his trip on a steamboat on Lake Biwa, his various experiences.

クリント・ジョンソンっていうアメリカ人が日本の大学で1年間英語を教えにやってくる。アパートを探したり、琵琶湖で蒸気船に乗ったり、とにかくいろんな体験をする。

それを読んで、まずは内容を理解する。もちろん、それぞれのキャラクターになりきって、ロールプレイをすることも可能。

In addition, there are the exercises which are designed for pair work. This is good because you can choose your partner to practice with, and in class it gives all the students an equal chance to speak as much as possible.

その次に、エクササイズがある。ペアワークなので、自分でパートナーを選んで練習できるし、授業なら学生みんなに話せるだけ話すチャンスが平等に行き渡る。(これが、ペアワークのいいところ)

こういうスタイルで描かれたシーンが全部で16あり、それぞれにサマリーがダイアリー形式でまとめられているなど、復習にも使える配慮もしてある。

Dear Teacher,

Stimu・Con Heart to Heart and its companion Stimu・Con Heart to Heart Workbook are based on a new approach to language teaching which makes it possible for teachers to develop their students fluency in speech at the same pace as their accuracy in usage.

We sincerely hope teachers will enjoy using these ciassroom-tested materials which have been designed for Japanese students with a good knowledge of the linguistic system but who unfortunately have not been able to use the language communicatively.

教師用の簡単なマニュアルの冒頭には、こんなことが書かれている。

こんなテキストで英語の勉強ができたら、どんなに楽しいだろう・・・。自然と英会話に親しみ、それが身につくと思うんだけど、なっ!


「Twitter英語術」に用意されている仕掛け

土曜日の帰り、久しぶりに本屋さんに寄って見つけた「Twitter英語術」(晴山陽一&クリストファー・ベルトン:著、じっぴコンパクト新書)を読んでみた。

・・・というより、この本に刺激されて、「よし、自分も英語でtweetしてみよう!」という気になった。(もっとも、そう簡単にできるものではないことは、自分が一番よく知っているのだが)

さて、この本。140文字までというTwitterの字数制限を逆手にとって、英会話の苦手な日本人でも気軽に身近な英文をつぶやくことで、Twitterを英語でのコミュニケーション・ツールとして使おうというもの。英語に関する著作の多い日英の作家(晴山陽一さんとクリストファー・ベルトンさん)が協力して書き上げた、Twitterならではの言い回しや表現を、読むだけで楽しみながら学べるストーリー型文例集になっている。

さらに、ただの文例集なら単なる参考書どまりだが、「この本には世界に前例のない”仕掛け”が用意されている」(p.8)。

なんと、「本書に登場する5人のキャラクターのアドレスはTwitter上に現実に存在し、読者は各キャラクターのタイムラインを実際に読むことができる」というのだ。「このような、バーチャルとリアルが交錯し、読者がその展開をリアルにTwitter上でフォローできる仕掛けは世界初の試み」らしい。

もちろんボクも、さっそく5人の登場人物をフォロー。山下啓太 と アンジェラ・クローフォードという中心人物を手始めに、tweetをたどり始めたところ。

また、この本にはコラムとして、「英語 Twitter のコツ」 (MINORI さんに聞く)という、英語tweet初心者には心強い体験談が載っている。

著者の晴山さんが、Twitterを通して得た友人のひとりであるというMINORI さん が、たった半年でいかにして海外に多くの友人をつくることに成功したか。そのコツを、自らの体験をもとに丁寧に説明している。このコラムだけでも読む価値十分だ!

もちろん、すぐにMINORIさんをフォロー。しばらくして、向こうからもフォローを返してくださったので、はやくもつながりができた。こういうリアルタイムな関係性もTwitterのいいところ。

とはいえ、本を読んだだけで英語でのコミュニケーションができるわけではない。何よりも日々の積み重ね・・・がんばって英語でtweetしていくほかに、上達の道はない!

今日の成果は、数回の英語tweet。まだまだ道は遠いようだ・・・


慣れ・だれ・崩れ・去れ

すっかり定着した、というより・・・まるでずっとそうだったかのように馴染んでいる中学校の土曜日授業。今日のように、中間考査を前にした貴重な時間となると、勢いそのムードも違ってくる。目の輝きに真剣さが増し、質問の切れ味がよくなってくるのだ。

3時間で終わるのがもったいなくなるくらいの「前向き」さ・・・

1年生は、その流れをそのまま残すかのように、放課後「自主勉強」を続けていた。2・3年生は少し大人、それぞれが自分のペースで、家で計画的な勉強をしてくれていることだろう。

「わかろう」とする気持ちにスイッチが入った時、ココロとカラダは一気に「学び」の体勢を自らつくりを始める。どうかそれに素直に反応し、来るべき中間考査に向けて頑張ってほしい。

さて、今日読んでいた『結果をきちんと出せる人の習慣術』(菅原圭:著、KAWADE夢新書)に、劇団四季のことに触れた部分があった。「CATS」はじめ「オペラ座の怪人」、「ライオンキング」など、ロングヒットを続ける演目をいくつも持っている、まさに《結果》を出し続ける劇団だということで、その理由について分析している。

あらかじめロングランを予想できれば、装置や衣装などに思い切った投資ができる。そうすれば、舞台はいっそう華やかにドラマティックになり、それがまた、観客を呼び続ける力になる。だが、ロングラン興行を実現するのは、頭で考えるほど容易なものではない。

劇団四季を率いる浅利慶太氏は戦略を考え抜いた。その戦略の核になっているのが、ひとりのスターを育てるのではなく、劇団員全員がレベルアップしていくという方針だった。

稽古段階では、主役はそれぞれ4、5人の俳優が同じ密度で稽古をしている。本番の直前まで、誰が主役として舞台を踏めるかはわからない。ほとんどの役が、こうしたシステムになっているというのだ。

「四季のモットーは『慣れ・だれ・崩れ・去れ』なんです。どんなことでも長く続けていると、どうしても慣れ・だれ・崩れが出てきます。それをなくすためには、劇団員のあいだでもたえず切磋琢磨させる環境づくりをしています。ダブル、トリプルキャストは俳優のケガや病気などのアクシデントに備える意味もありますが、同時に、役者同士を競わせ、つねに質の高い舞台を維持するためのシステムなのです」

浅利さんは、テレビ番組でこう語っている。実際、公演中でも、役者を入れ替えるということはしょっちゅうあるというから、気が抜けない。

劇団四季では、舞台裏を支える技術や営業のレベルアップにも力を注いできているそうだ。個人の成長とともに、個人が集合した組織全体のレベルアップをすすめていく。こうしてやってきた結果、劇団四季のミュージカルはいまや、世界のどこに出してもヒケをとらないレベルにアップしてきている。

勉強は「集団競技」だ。自分ひとりだけでなく、クラスのみんなが、学校全体が「賢く」なってはじめて自分のレベルも「確かなもの」として上がっていく。そういう意味で解釈すれば、子どもたちの勉強に対する姿勢になるだろうし、役者を教員に置き換えて、学校の組織マネジメントの方法論としても捉えることができるだろう。


大人げない大人になれ!

今日中に終わるはずだった年賀状づくりなのに、ついつい手に取った本が面白くて、またもや先延ばし・・・

マイクロソフトジャパンの元社長、成毛眞氏の痛快な著書。かなりおすすめ。

表紙裏帯に書かれている言葉に、ココロが引き寄せられる・・・

これからの時代は、自らが変化を作り出すことが求められる。そこでは、我慢をしてがんばったり、空気を読んだりしている暇はない。

必要なのは均一な労働力ではなく、飛びぬけた創造性である。平均からいかに逸脱できるか。そのカギを握るのは「大人げなさ」なのである。

成毛氏はじめ、ビル・ゲイツや堀江貴文など、世間を騒がせてきた大人たちがどんなに「大人げないか」を、豊富なエピソードを交えて紹介している。

大人げない人はつまらない常識に囚われない。己の欲求に従い、やりたいことをとことん追求するため、斬新な発想ができる。しかも、好きでやっているので、時間を忘れて仕事に没頭する。

個人であれ、企業であれ、並外れた創造性が必要なこの時代に、それが強みでなくて何であろう。

「いらぬ我慢はしない」「大人を怒らせよう」「空気を読むな」。

私の周囲の成功者とされる人に、我慢強い人物は見当たらない。逆に、やりたいことがまったく我慢できない、子供のような人ばかりだ。(中略)我慢をして嫌々ながらやってる人が、こういう人達に勝てるはずがないではないか・・・

全くその通り!


近江商人のエピソードに学ぶ

「ブラックジャックによろしく」のモデルであり、メディアにも数多く取り上げられる心臓外科医・南淵明宏さんの著書、『釣られない魚が大物になる―手術職人の生き方論』。

その中の一節に「近江商人のエピソードに学ぶ」と題した、こんな一文がある。

近江商人と言えば、私の好きな話があります。『てんびんの詩』(梅津明治郎監督、1988年)というビデオになっている話で、伊藤忠商事では新入社員研修のときに見るのだそうですが、こんな話です。

近江商人は天秤棒を担いで全国を行商していたことで有名です。そんな近江商人の息子が小学校を卒業する年齢になりました。近江商人の子どもたちは近江八幡商業学校に行くことになっていて、子ども同士で「おまえ、どこ行くねん」「八商行こうと思うねん」「ぼくも八商や」とか会話するわけです。

その中の一人がある日学校から帰ると、父親から「おまえは明日から鍋蓋を売ってこい」と命じられます。木でできた丸い鍋の蓋です。それを天秤棒に載せて売ってこい、売ることができたら八幡商業へ行かせてやると言うのです。

少年は翌日から鍋蓋を天秤棒で売りにでるのですが、子どものことですから最初は親戚や知人に頼ります。ところがそこでは「あかん。そんなことしたら大将に怒られる。あんた、自分で売りなさい」と叱られてしまう。と言っても、そうそう売れるものではなくて、彼は途方に暮れてしまいます。

そんなとき、ある家で鍋蓋を庭先に干してあるのを見つけます。これを壊してしまえば新しいものを買ってもらえると考えた彼は、その鍋蓋を壊そうとします。ところがそれを見つかって家の人に追い回される羽目になったりします。

どうにもならなくなった彼は、中学進学を半ば諦めながら川べりに停んでいました。するとそこに、古い鍋蓋が捨ててあることに気づきます。手にとってみた彼は「これはまだ使えるんじゃないか」と、その鍋蓋を磨きはじめました。

そこに通りがかったひとりのおばちゃんが、少年になにをしているのか尋ねます。「私は鍋蓋を売って歩いているんですが、全然売れへんのです。ふと見たら、ここにこの鍋蓋が捨ててあって、これを売った人もえらく苦労したんやろなとおもたら、鍋蓋が愛しく思えて」

それを聞いたおばちゃんが、「よし、あんたの鍋蓋、ひとつ買うたるわ」と、そこではじめて鍋蓋が売れました。

家に帰ると、父親が彼の担いでいた天秤棒に名前と日付を書き込みます。それを奥の座敷に持っていくと、同じような天秤棒がずらりと並んでいて、そこには父親自身の名前やその父親、そのまた父親と、代々の当主の名前が書かれていました。「うちはおまえの年になると、みんな天秤棒を担いではじめての商いに行ったんや。よう売ってきたな、八商に行ってええぞ」と、そんな話です。

いい話です。商品を売ることに身体を張って、命を張って、真剣勝負をする。そして、自分が人生を賭けている商品に対する愛情を持つことの重要さがよく表現されている物語でした。

命がけとか真剣勝負と言うと、なにか根性論のように聞こえてしまうかもしれないのですが、あまり売る気もないのになんとなく売れちゃった、ではなくて、必死になんとか売ろうとしたものが売れた嬉しさは、間違いなくあると思います。そして、そのことにこそ価値があって、その価値を享受することができるのでしょう。

まず大切なのは、自分の中に価値を見いだすこと、価値を作り出すことだと思います。この話の少年は最初、鍋蓋なんて、と思っていました。しかし、それを売ることの大変さを知り、常日頃、鍋蓋を売ることを本業としている人達の苦労、そして商品である鍋蓋への愛情、商品が売れること、それらすべての価値を見いだしたわけです。

それにしても、鍋蓋を売った少年の価値とはなんだと思いますか。それは「誠実さ」です。「誠実さ」を売り物にするという手法は、最も手っ取り早く効果的で、お金もかかりません。そして釣り上げられずに一人でもやっていける、本物の力になるのです。

何事に対しても「誠実で」ありたい。自分の仕事に対しては特に・・・

心からそう思う。


風になった日

私はつい4年前まで、マラソンを一度も走ったことがなかったのだ。

監督と出会って、この4年間の時間の中で、私の人生は変わったし、人は変われるものなのだと、本当に実感している。

「自分はもう年だから」とか、「私は就職しちゃったから」とか、そんな諦めはまったく必要がない。

私のように弱い選手でさえ、夢や希望をもって頑張るだけで、こんなにも違う人生を味わうことができるのだ。

夢をもって頑張れば、必ずかなえられる。

シドニーオリンピック・女子マラソン金メダリスト、高橋尚子さんの著書『風になった日』の表紙カバーの裏側折り返し部分には、こんな言葉が記されている。

本当に、たった4年間でこんなにも変われるものなのだろうか。僕が、いくら夢や希望をもって頑張っても、まさかそこまでになるはずがない。何もマラソンに限らず、それ以外のことにしても・・・。

何度読んでも、そのたびに、こんな反論をしてしまう。

もっとも、事故や病気、一夜明けたら億万長者など、人生には予期せぬ出来事だってあるし、仕事や結婚、出産など、人生の節目における変化だってある。しかし、そういったことを除けば、自分の意志でそこまで自分を変えられるのは並大抵のことじゃない。

なのに、どうして高橋選手はやってのけたのか・・・。

たぶん、その違いは夢や希望の強さ、つまり、どれほどそれを実現しようと思っているかの差だと、僕は思う。誰でも、「自分はこうしたい」、「こんな自分になりたい」、「○年後には、必ずこうなっているぞ」といった夢を持っている。しかし、多くの場合、それは<できれば実現できたら>という夢であって、<絶対に実現させたい>夢ではない。そこに甘えがあるんだと思う。

本当に実現させたいのなら、それにふさわしい自分自身・・・なりふり構わず努力する自分、無我夢中でやり抜く自分、つまり、絶対にそれをやり遂げるんだという自分がそこにいなければならない。加えて、その思いを実現するまで、ずっと持続し続けることも必要になってくる。

僕がいつも、自分がそこまで変われないと思うのは、根底に、そういった絶対的な自分がいないからだ。まだまだ弱い自分、夢が夢で終わっても仕方がないという自分が、そこにいるからだ。

どんなささやかな夢であっても、絶対実現させるぞという気持ちがなければ、夢で終わってしまう。逆に、どんなに大きな夢であっても、絶対に実現してみせるぞという強い気持ちがあれば、達成できる。要するに、その違いなのだ。

何も、オリンピックレベルのことじゃなくても、これと同じような場面はいくらでもある。自分の弱さ、甘え以外の何者でもない。

<強く願えば夢はかなう!>

弱音を吐きそうになった時、この本を手に取ると、自分の心に眠る「夢」が呼び起こされる気がして元気が出る。


あまり休めなかったけど・・・

朝から、気持ちのいい天気になった日曜日。絶好の運動会日和~!って感じで、今日やってるところは、さぞかし気分よかろう。うちの町内会は、来週の日曜(11日)だ。

で、今日はというと、ふるさとを守る会の奉仕作業ってことで、午前中、中学路脇に植えられているシバザクラの草刈り。単調な作業がイヤになるが、まあそこは世間話でごまかしながら、ローカル色を満喫したひとときだった。

午後、車で大津へ。ピアザ淡海で行われる、滋賀の私学助成をすすめる会の学習会&事務局会議。11時から、パルコ前で行われた街頭署名に参加したかったが、奉仕作業の関係で間に合わず、午後からのプログラムに合流。

本校からは、父母と教師の会会長はじめ、7名の保護者が署名に参加。午後も引き続き4名が残って下さって、その熱心さがひときわ光った。活発な意見交換で、予定時間を1時間以上もオーバー。各校で必要な取り組みなど、今後の活動に向けて一定の方向性が見えたように思う。

帰り、せっかく大津まで来たのだからと、パルコの紀伊國屋へ。以前なら毎日通っていた場所も、久しぶりに来ると新鮮だ。結局、新書を3冊購入。

なぜ勉強させるのか? (諏訪哲二:著、光文社新書)
学校不信が止まらない。保護者たちは、右往左往の教育改革を横目に、「わが子だけを良い学校に」と必死だ。そのニーズに応えて、「百ます計算」や「親力」といったメソッドが次々と紹介され、指導法のカリスマが英雄視される。勉強の目的といえば、「得になるから」「勝ち組になるため」に収束した感があり、すこぶるドライな経済的価値観が目立つようになった。だからこそ、本質から問いたい。「なぜ勉強させるのか?」と。

 ☆東大合格高校盛衰史 (小林哲夫:著、光文社新書)
毎年の合格者数ランキング上位約100校を調べ上げ、一挙掲載。テーマ別にさまざまなランキング表を作成。マル秘エピソードが、もりだくさん。本書は、これらの独自データをもとに新旧の名門高校を分析し、真の 実力を評価します。伸びる理由、低迷する理由が、いま明らかに。

 ☆「反貧困」の勉強法 (和田秀樹:著、講談社+α新書)
今や、まともに大学受験するのは「2割」だけ。格差社会の本質は、本当の意味での「学歴格差社会」。受験は社会に出て必要なノウハウを得る格好の場、わが子を貧困層にしたくないなら勉強させよと説く画期的書。

最近、活字好奇心がちょっと教育関連書に偏っているのが気にかかる。