●水・・・その素晴らしき姿よ!
水は、すべての生きものが生命を保つ上で必要不可欠な物質だ。
その組成は極めて単純でありながら、存在は実に大きく、奥深い。
また、水は哲学的に見ても、まさに「人生の師」というような存在だ。
ギリシャの哲学者タレスは「万物の根源は水である」と言った。
老子の言葉には「上善如水(上善は水の如し)」という言葉がある。
『上善』とは、最も理想的な生き方を指すらしい。
そんな生き方をしたいのであれば、『水』のように生きなさいと言っている。
「水」は環境の変化に素早く対応するけれども、決してその本質は変わらない。
変化に柔軟に対応し、透明無私な心で一瞬たりとも留まることを知らない。
あらゆる生物に生命力を与え、生活あるいは生産活動に潤いをもたらす。
しかし、「水」は何の対価も求めない。
「水」の度量は広く、すべてを受け入れる。
いかなる障害に遭遇しても、それを克服する勇猛心と方円の器に従うことができる。
つまり、”謙虚に生きなさい”ということなのだ。
もう少し話を広げていくと、老子の『十徳』に行き着く。
「上善如水」は、この『十徳』の中のひとつだ。
一、 有無相生 (善悪、美醜を隔てない)
二、 不争 (決して争わない)
三、 和光同塵 (名誉を求めない)
四、 上善如水 (謙虚に生きる)
五、 為腹不為目(自らの生命を養う)
六、 無物之象 (見えないものを信じる)
七、 絶学無憂 (知識より意識を大切にする)
八、 曲則全 (理想を人に押しつけない)
九、 知者不言 (教育を押しつけない)
十、 天網恢恢 (生命の法則によって生きる)
あたりまえの、しかし奥の深い言葉ばかりが並んでいる。
目先の欲に従わず、自然の原理原則に沿って生きていくことが、
人の歩むべき道だということだろう。
すべてを行えればいいが、なかなかそうもいくまい。
しかし、常に心の中にこの教えを持ち、たとえひとつでもいいから、
自分が自信を持ってやっていると言えるものをつくりたいものだ。
話しを水に戻そう・・・。
実は我が国にも、水に人生訓を求めた人物がいた。
天下統一をなした豊臣秀吉の軍師であった黒田官兵衛(如水)だ。
彼がつくったとも、王陽明、あるいは老子がつくったとも言われているが、
今でも企業の経営者などが、よく引き合いに出し、拠り所にしている
『水五訓』(水五則や水五教ともいう)が、それだ。
一.自ら活動して他を働かしむるは水也
一.常に己の進路を求めて止まざるは水也
一.障碍(しょうげ)にあい激しくその勢力を百倍し得るは水也
一.自ら潔うして他の汚れを洗い清濁併せ容るるの量あるは水也
一.大洋を充し発しては蒸気となり雲となり雨となり雪と変じ霞と化し
凝っては玲瓏たる鏡となり而も基性を失わざるは水也
わかりやすく言い換えるなら、次の5つを持とうということになろうか。
1.相手に合わせて自分を変える謙虚さ
2.常に前進する気持ち
3.困難にあった時に、力を大きくして打ち破ろうとする細かな感受性
4.良いことも悪いことも取り込み序々に清らかにしていく器量
5.その時々において変化しつつも
基本的な性質を失わないで筋の通った生き方
初めてこの言葉を読んだ時、ハッとした。
水がとても愛おしく、自分も水のように生きたいと思った。
できる・できないはともかく、
いつも水のような自分でいようと、心に決めた。






