2月28日(土)、春を思わせる陽射しの中、平成26年度の卒業生を送り出しました。
式後、何人かの方から「どんな式辞だったか教えて!」との声をいただきました。ありがとうございます。
お読みいただくほどのものではございませんが、こちらに転載しておきます。
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平成二十六年度 卒業証書授与式 式 辞
厳しかった冬の寒さも少しずつ和らぎ、周囲の山々が、ようやく春色に染まり始めてまいりました。
本日ここに、平成二十六年度 滋賀学園高等学校、卒業証書授与式を挙行いたしましたところ、小椋 正清・東近江市長様をはじめ、多数のご来賓の皆様にご臨席いただき、錦上華を添えていただきましたこと、高壇からではございますが、衷心より厚くお礼申しあげます。
本日、お子様の晴れの日をお迎えいただきました保護者・ご家族の皆様、まことにおめでとうございます。
幼い頃、何をしても笑って許した、かわいい我が子。自我に目覚め、親に反抗したかと思えば甘えてきたり。自立と依存の狭間で成長していく姿を見守りながら、幾度となく悩み、苦しまれたことがあったと思います。それも、いまは良き思い出になりました。
入学以来、三年間あるいは六年間、さまざまな形で本校の教育活動にご支援、ご協力いただきましたことを、この場をお借りして厚くお礼申しあげます。
ただいま、卒業証書を手にされました、一三五名の卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
明るく元気な声で挨拶ができる、礼儀正しい学校。留学や英語、福祉、情報、スポーツなど、自分の学びたい分野を選択し、時代のニーズに応じた学習を追求していける学校。全国大会出場をめざし、多くの部活動が切磋琢磨しあう、はつらつとした学校。先生と一緒になって工夫・議論し、個性あふれる学園祭のできる学校。
私は、数多くの先輩たちが築きあげ、皆さんの努力によってさらに発展してきた、本校のこのような校風を誇りに思います。
特に、今年の卒業生は、高校創立三十年の節目にあたり、さらなる高みをめざして学校改革に取り組んだ「新・シガガク宣言」の初年度入学生でした。
再編された類や新しい教育課程、放課後から夜間までの学内塾など、さまざまな取り組みを切り拓いていく学年として、多くのことにチャレンジし、一人ひとりが、その役割を立派に果たしてくれました。
それが進路実現にもつながり、指定校や推薦入試に頼ることなく、最後まで一般入試に挑戦してくれました。
決してあきらめることなく、目標に向かって突き進む、素直で前向きな皆さんの姿は、後輩たちにとって大きな道標になりました。
たくさんの笑顔と元気を、ほんとうにありがとう。
また、すでにお気づきの方もおられると思いますが、これまで濃紺だった体育館の緞帳が、茜色の真新しい装いに一新されました。これは、本校の同窓会である「梅友会」から、創立三十周年にあわせ、生徒の励みになればと贈っていただいたものです。今日の卒業式が、その使い初めとなります。皆さんにご披露申し上げ、お礼の言葉とさせていただきます。ありがとうございました。
さて、卒業生の皆さんが社会で活躍する時代は、国際的な視点と多様性理解が必要な、真のグローバル社会です。日本の人口は今後減り続け、先進的少子高齢化社会を迎えます。新しい課題を率先して解決していかなければなりません。
また、自然の脅威に対し、いかに自然と共生できるか、限りなく進歩する科学や技術を人間が理性を持って制御し、活用できるかも大きな課題です。
宇宙飛行士が宇宙から見た地球は、きれいな青い水の惑星で、極めて壊れやすそうだったといっています。地球環境を守り、争いなく、永く自然と共生することも忘れてはなりません。
一方、日本は人材こそが資源であり、財産です。技術革新や知恵を結集し、質の高い国をつくり、世界をリードすることが日本の生きる道です。
そのためにも、皆さんは人から信頼されること、新しいことにチャレンジする意欲を持つこと、自分の得意分野や専門を持つことが、何よりも大切です。
十年、一つのことをやれば、必ずものになります。頑張ってほしいと思います。
また、法律で守られた権利を主張するだけでなく、まず義務を果たす。お世話になるだけでなく、人のお世話ができる人に育ってほしいと思います。
北海道の赤平市という旧炭坑町に、社員数約二十名の「植松電機」という町工場があります。
ロケット開発や子どもたちへのロケット教室を行っている小さな会社ですが、NASAから、わざわざ実験にやってくるほどの「無重力実験設備」があります。
それらはすべて、四十八歳の専務取締役、植松 努さんが中心になって、「ロケット飛ばしたい」という情熱だけで、自分たちの手で作りあげたものです。
昨年夏に行われた、ある催しで、植松さんがこんなことをおっしゃっています。少し長くなりますが、紹介させてください。
僕は、小学校に上がってすぐ、担任の先生にものすごく嫌われたんです。僕が信じていたことや、ばあちゃんが教えてくれたことが全部否定されました。
僕が話す夢は、「お前なんかにできるわけがない」って、さんざん言われました。じいちゃんが撫でてくれた頭は、先生にさんざん殴られました。とっても辛かったです。
僕は、その先生が言っていた言葉を忘れてはいません。
その先生は、「どうせ無理」という言葉をよく使っていました。これは、人間の自信と可能性を奪ってしまう、最悪の言葉です。そして、これを唱えるだけで、何もしなくて済んでしまうという、すごく楽になれる、恐ろしい言葉でもあるんです。
こんな簡単な言葉で、未来を諦めさせられてしまった人たちは、しだいに自信を失っていきます。
でも、人間は生きてくために、どうしても自信が必要なんです。
だから、自信を無くしてしまった人の中には、お金で自信を買うようになって、身を飾るようになったり、またそれを自慢したり、そのために人を見下したり。さらには、他の人が頑張ったら困るからと、努力を邪魔するような人まで出てきます。
こういう人が、皆さんのまわりにもいるかもしれません。
その人たちは、自信をなくしてしまった、かわいそうな人たちなんです。その人たちが、自分の自信を守りたくて、仕方なく他の人の自信を奪ってしまっているのです。
世の中には、失敗をマイナスだと思っている大人がたくさんいます。そんな人たちが、みなさんの可能性と自信を奪ってきたんです。
でも、これからの日本を、世界を、よくしていくためには、「どうせ無理」という言葉に負けない人を増やしていかなければなりません。
そんな、自分たちの自信を取り戻すための、とてもいい方法が一つだけあります。
それは「やったことがないことを、やってみる」ことです。やったことがないことをやってみるだけで、小さな自信が湧いてきます。
でも、やったことないことやると、どうしても失敗してしまいます。その時、失敗した自分を、逃げた自分を、諦めた自分を、決して責めないでください。
僕らは今、生まれて初めての、一回きりの人生を、ぶっつけ本番で生きているんです。
僕らにとって、失敗は、より良く生きるためのデータ集めにすぎません。だから、どんどん失敗して、それを乗り越えていってほしいんです。
これから先、僕らがやっていくべきことは、「できない理由」を探すことではありません。「できる理由」を考えることです。
僕は、小さい頃から飛行機やロケットが大好きでした。でも、やったことない人が「できるわけない」って散々言いました。
そんな時、お母さんは「思うは招く」って教えてくれました。思い続けたらできるようになりました。だから、思い続けるって、きっと大事です。
どうだったでしょう。
「できない理由」を探すのではなく、「できる理由」を考える。なんと夢のある、前向きな生き方でしょう。
今日のお祝いに、これからは「どうせ無理」をやめて、お互いに夢を語り合い「だったらこうしてみたら?」と言ってみる。それを、ここにお集まりの皆さんで誓いませんか。そしたらきっと、全員の夢が叶うのではないか。私は、そう思います。
さて、いよいよ旅立ちの時が近づいてきました。
卒業は、英語でgraduationとともにcommencementとも表現され、「新しい出発」という意味があります。また、シリコンバレーではpromotionと呼ばれ、まるで大人への階段を一つ一つ上にあがっていくようなイメージなんだそうです。
皆さんの、これからの人生。その長い道のりには、楽しいことばかりがあるとは限りません。もし、苦しいことや、つらいことに出会ったときは、母校を思い出してください。
もちろん、飛びっきりの嬉しいことがあったら、真っ先に母校の校門をくぐってください。
私たちは、いつでも皆さんを待っています。
本日ご臨席を賜り、卒業生の前途を祝福してくださいましたご来賓の皆様、また、ご列席いただきました保護者・ご家族の皆様に、再度お礼を申しあげ、卒業生の皆さんの未来が、希望に満ちた輝かしいものであることを信じ、餞の言葉といたします。
平成二十七年二月二十八日
滋賀学園高等学校
校長 安居長敏
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